双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
子供たちと彼の時間を奪わなくて済んだのかもしれないのだ。

……まだそれを言えていないのに、彼の愛を受ける資格は自分にはない。

「全部俺が背負うから」

 晃介が優しい優しい声を出した。

「君が苦しんでいることを知りながら、なにも解決できていないのに、それでも君が欲しいんだ。申し訳ないと言うなら、少しだけでも愛をくれ」

切実な響きを帯びた愛の言葉に、葵の脳がジンと痺れる。

ゆっくりと近づく彼の吐息と熱い視線。
……もう抗うことはできなかった。

——二年半ぶりの口づけに、葵の意識は幸せな過去へと飛ばされる。

スカイツリーが見える彼のマンションのリビングで、ふたりははじめてキスをした。

あの時夢見た幸せな未来。今からでも望んでいいのだろうか。

うなじに差し込まれる長い指の感触に、葵の背中が甘く痺れる。

崩れ落ちそうになるのをシャツを掴んでなんとか耐えた。

キスをする時、彼はいつもそうやって葵の髪を楽しんだ。

温かくて大きな手で優しく葵の退路を断ち、葵の中に触れていく。

普段の穏やかで紳士的な彼からは想像できないくらい情熱的な口づけに、葵はいつも翻弄された。
「んっ……ん……」

こどもたちには聞かせられない艶めいた声が漏れ出てしまうのを止めることができなかった。

「……愛してるよ、葵」

荒い吐息の囁きに、葵はゆっくりと目を開く。

誠実さと力強さを湛えた彼の瞳が至近距離で自分を見つめていた。

額と額をぴたりとつけて、晃介が囁いた。

「愛してる。……俺を、信じてくれ」
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