双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
ようやく母は、安心したように頷いた。

「ならよかったわね。……でもそれなら、どうしてあそこまで頑なに言わなかったのかしら、とも思うけど。まぁ、母親になってみて心境が変わるということもあるか」

年の功だろうか、詳しい事情は知らないまま母は言う。

その通りだと葵は思った。

彼から逃げて地元に戻った時の葵は、どんなにつらくて寂しくても我慢しようと思っていた。

貝みたいに心を閉ざして耐えていればいつかは忘れられる、そう信じて。

再会してからも逃げることしか頭になかった葵の心を動かしたのは、子供たちに対する彼の言葉だった。

『あの子たちには自分の父親が誰かを知り、その愛情と支援を受ける権利がある』

自分の抱える事情よりも、子供たちの未来を一番に考えたい。

そうするべきだと思ったのだ。

それが母になるということなのかもしれない。

「それで……その方と、葵との関係は?」

少し遠慮がちに母が尋ねる。この質問にも葵は正直に答えた。

「……向こうは、やり直そうって言ってくれてる」

「あら、そうなの」

母が拍子抜けしたように言ってから、子供たちに聞こえないように声を落とした。
 
「だけど、葵が嫌だってこと?」
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