息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
導かれる者たち/その4


「…奥さん、トンネルの中心辺りではしゃいでいたそうだよ。一人でケタケタと子供のように、無邪気な笑い声をあげてね。靴の音が混じって、真夜中の暗いトンネル内にはさぞ響きわたっていただろうな…」

そして夫は妻に駆け寄り、しっかりしろと何度も大声を上げると、スーッと何かに解放されたかのように、妻はばたりと地面に崩れ落ちたという。
そして、夫の顔を数秒間じっと見つめた後、正気に戻ったと…。

「…平たく言えば、催眠状態にかかっていたというのが理にかなっているんだろうが、車より早く数キロ離れた隠山に移動していたとかは、とても説明がつかないよね。まあ、B氏としては、やはり結婚式の帰り、そのトンネルで歌を歌ったことが原因じゃないかと考え、A氏に伝えた訳だ。AとBの両氏は、とにかく関西方面に住んでいるC氏に連絡を取ってみることにした。彼の身、もしくは近しい人に何か異常はないかとね…」

「その時、Aさん自身と家族とか周辺には何も変なことは起こっていなかったんですね?」

こう尋ねた律子ではあるが、明らかに確かめるというニュアンスだった。

...


「ああ、そうだよ」

「それで、もう一人のCさんの方は、何かおかしなことが起こっていた…」

これにはやや苦笑いをしながら多田が”うん”と頷いた。

「…要は隠山トンネルに行った3人のうち、Aさんだけが身辺に異変はなかった訳ですね。それってなぜなのか…。あのトンネルや近くの地蔵のことを調べて行くうちに、多田さんがあの地のことに詳しいと知って、訪ねたってことなんですね」

「ふふ、読みが早いね。まさにそう言うことだよ」





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