息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
導かれる者たち/その5
多田との噴水前での話は、30分をちょっと超えたところでお開きとなった。
多田からはCの身に起こった不可解な出来事についても教えたもらったが、律子はなかば聞き流していた。
Cの場合は、彼自身が奇怪な現象に襲われていたのだが…、要は夢の中にあのトンネルが頻繁に出てくるということだった。
しかし、実際はそれだけに留まってはいなかった。
Cは妻から苦言を突き付けられて、あることを知ることとなるのだ。
トンネルの夢を見た翌朝、彼が寝ていた布団の中には決まって動物の毛のようなものが何本か入っていた。
それを妻が発見すると、Cは寝床に何かを持ち込んでるのかとか、隠れてペットを飼っているんじゃないかと詰問されたのだ。
Cはあの日、トンネルに一緒にいた他の二人からBの妻の一件を聞くと、背筋が凍る思いだったという…。
...
そして3人はあれこれ考えた末、結局、霊能者に相談することを決めた。
「…3人はあのトンネルから帰る時にUターンした際、地蔵と杉の大木は視界に入ったらしくてね…。ここの狐の言い伝えを知って、霊能者の助言のもと、尾隠れ地蔵を訪れて手を合わせたそうだ。狐を供養する念を唱えてね…。しかし、数年のうちにB氏の奥さんとC氏は亡くなった…」
Bの妻は交通事故、Cは自殺だったが、いずれもあのトンネルが頭と心から離れることはなく、二人ともノイローゼ状態に陥っての死というのは疑いようがなかった。
「…外科医だったC氏は、駅のホームから飛び降り自殺する前には、手術中も狐とトンネルの白日夢にさいなまれていたそうでね。一方、B氏の奥さんは街中で突然猫を追いかけて、車の行き交う道路を横断してね…。それで車にはねられて即死したというんだ……」
「お気の毒に…」
口ではそう漏らしたが、律子はどこか、通り一遍の言葉で受け流している自分を感じていた…。
...
この辺りで律子にとっては、隠山トンネルに関わってどんな不思議な出来事が起きたかは、もはやさぽどの関心事ではなくなっていた。
今、律子が知りたいことは”他のこと”だったのだ。
それを感じ取った多田は話を急ぐことにした…。
「じゃあ、Aさんは私を訪ね、あの地蔵やトンネルにまつわる言い伝えとかの話を聞いてどう考え、実際にどうしたかってことだけどね…」
律子は、多田が話す続きをせっつくように、心持ち前のめりになって耳を研ぎ澄ませていた。
...
「…彼は自分だけがなぜ無事なのか、その理由を突きとめたかったたんだよね。私に会う前までのA氏は、いわゆる霊感のあるなしという角度の見方をしていた。でも、その後変わった。要は、あのトンネル付近の土地に導かれる素養を持っていたか否かではないかという仮説に考え至ったんだ…」
もう律子には、死んだ二人がこの地に導かれる何かの要因を内包していただろうと推測していたし、具体的にそれがどんな経緯だとたかの”詳細”はどうでもいいことだった。
それよりも、自分にとってはAがそれを悟り、どんな行動をしたのか、彼女はそれに興味を注がれていたのだ。
多田との噴水前での話は、30分をちょっと超えたところでお開きとなった。
多田からはCの身に起こった不可解な出来事についても教えたもらったが、律子はなかば聞き流していた。
Cの場合は、彼自身が奇怪な現象に襲われていたのだが…、要は夢の中にあのトンネルが頻繁に出てくるということだった。
しかし、実際はそれだけに留まってはいなかった。
Cは妻から苦言を突き付けられて、あることを知ることとなるのだ。
トンネルの夢を見た翌朝、彼が寝ていた布団の中には決まって動物の毛のようなものが何本か入っていた。
それを妻が発見すると、Cは寝床に何かを持ち込んでるのかとか、隠れてペットを飼っているんじゃないかと詰問されたのだ。
Cはあの日、トンネルに一緒にいた他の二人からBの妻の一件を聞くと、背筋が凍る思いだったという…。
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そして3人はあれこれ考えた末、結局、霊能者に相談することを決めた。
「…3人はあのトンネルから帰る時にUターンした際、地蔵と杉の大木は視界に入ったらしくてね…。ここの狐の言い伝えを知って、霊能者の助言のもと、尾隠れ地蔵を訪れて手を合わせたそうだ。狐を供養する念を唱えてね…。しかし、数年のうちにB氏の奥さんとC氏は亡くなった…」
Bの妻は交通事故、Cは自殺だったが、いずれもあのトンネルが頭と心から離れることはなく、二人ともノイローゼ状態に陥っての死というのは疑いようがなかった。
「…外科医だったC氏は、駅のホームから飛び降り自殺する前には、手術中も狐とトンネルの白日夢にさいなまれていたそうでね。一方、B氏の奥さんは街中で突然猫を追いかけて、車の行き交う道路を横断してね…。それで車にはねられて即死したというんだ……」
「お気の毒に…」
口ではそう漏らしたが、律子はどこか、通り一遍の言葉で受け流している自分を感じていた…。
...
この辺りで律子にとっては、隠山トンネルに関わってどんな不思議な出来事が起きたかは、もはやさぽどの関心事ではなくなっていた。
今、律子が知りたいことは”他のこと”だったのだ。
それを感じ取った多田は話を急ぐことにした…。
「じゃあ、Aさんは私を訪ね、あの地蔵やトンネルにまつわる言い伝えとかの話を聞いてどう考え、実際にどうしたかってことだけどね…」
律子は、多田が話す続きをせっつくように、心持ち前のめりになって耳を研ぎ澄ませていた。
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「…彼は自分だけがなぜ無事なのか、その理由を突きとめたかったたんだよね。私に会う前までのA氏は、いわゆる霊感のあるなしという角度の見方をしていた。でも、その後変わった。要は、あのトンネル付近の土地に導かれる素養を持っていたか否かではないかという仮説に考え至ったんだ…」
もう律子には、死んだ二人がこの地に導かれる何かの要因を内包していただろうと推測していたし、具体的にそれがどんな経緯だとたかの”詳細”はどうでもいいことだった。
それよりも、自分にとってはAがそれを悟り、どんな行動をしたのか、彼女はそれに興味を注がれていたのだ。