息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
導かれる者たち/その6
「…それでね、Aさん、今は静町の近くの町に住んでるんだよ。ちょうど2年になるかな…」
多田は単刀直入だった。
「それって、多田さん…!Aさんは自分も”あの場所”に導かれるかどうか、自らで実験してるってことですか?」
律子の”返し”もこれまた単刀直入だったせいか、多田は思わず笑いをこぼした。
「はは…、まあ実験ってことになるのかどうかは微妙だろうがね…。彼にとっては、同じ体験を共にした医師仲間二人…、ああ、一人は奥さんだったが、結果的に不幸な死を遂げて自分だけ無傷ってことに苦しんだようだよ」
「…」
「…私を訪ねた後ほどなくして、そのかなり以前に奥さんを亡くしていたAさんは、息子に自分の歯科医院を継がせてね。引退した後の余生を”あの現場”の近くに住んで過ごすそうと決断したんだ。それで、あそこに導かれることなく一生を終えればそれまでだろうし、彼が言うには自己満足に過ぎないかもってことだった。…でもね、果たして今の世に、いわくの地と連動するなんてことがあり得るのか…。それは身を以ってでも確かめたい…、そんな強い気持ちがあったはずだ」
”わかる…、その気持ち…”
律子は会ったこともないAという歯科医師に対し、勝手にシンパシーのようなものを感じている自分に、なぜか安堵していた。
...
「Aさん、それで今も”無事”ってことなんですか?」
「うん。定期的に連絡を取っててね…、春先にはここへ見えて、何もないということだった。全く何も…」
「そうですか…」
「…お嬢さん、もしよかったらAさんと会ってみるかい?」
「えっ…、お会いできるんですか?」
「あなたもAさんと似たような思いがありそうだし、彼の方はかえってあなたみたいな人と話すことは歓迎すると思うんだよ。ああ、こういう仕事に就いてるんで、あくまで私個人からってことで住所を教えるから。個人情報を漏らしたとかってのは勘弁してね(苦笑)」
「もちろんです。ご迷惑はおかけしません。あのう…、できれば早めにお願いしたいんですが…。私は今からでも構いませんので」
「うん。なら、今電話してみよう」
多田はその場で携帯からAに連絡すると、運よく先方の携帯につながった。
そして、律子の前で端的に用件を述べ、今これからってことでアポイントもとってくれた。
「なら、これ住所ね。あと、地図を書くから…」
「何から何まですいません。うっかり携帯を家に置き忘れてきてしまったので…」
いろんな貴重な話をしてくれた上、親切にAとの仲立ちまでしてくれた多田に”嘘”をついたことで、律子にはちょっと心が痛んだ。
”警察が私を探し当てるのは時間の問題だ。急がなくちゃ…”
ノートに地図を書いてくれている多田を見つめながら、律子は胸の中でこう呟いていた。
それは決意も新たに…。
「…それでね、Aさん、今は静町の近くの町に住んでるんだよ。ちょうど2年になるかな…」
多田は単刀直入だった。
「それって、多田さん…!Aさんは自分も”あの場所”に導かれるかどうか、自らで実験してるってことですか?」
律子の”返し”もこれまた単刀直入だったせいか、多田は思わず笑いをこぼした。
「はは…、まあ実験ってことになるのかどうかは微妙だろうがね…。彼にとっては、同じ体験を共にした医師仲間二人…、ああ、一人は奥さんだったが、結果的に不幸な死を遂げて自分だけ無傷ってことに苦しんだようだよ」
「…」
「…私を訪ねた後ほどなくして、そのかなり以前に奥さんを亡くしていたAさんは、息子に自分の歯科医院を継がせてね。引退した後の余生を”あの現場”の近くに住んで過ごすそうと決断したんだ。それで、あそこに導かれることなく一生を終えればそれまでだろうし、彼が言うには自己満足に過ぎないかもってことだった。…でもね、果たして今の世に、いわくの地と連動するなんてことがあり得るのか…。それは身を以ってでも確かめたい…、そんな強い気持ちがあったはずだ」
”わかる…、その気持ち…”
律子は会ったこともないAという歯科医師に対し、勝手にシンパシーのようなものを感じている自分に、なぜか安堵していた。
...
「Aさん、それで今も”無事”ってことなんですか?」
「うん。定期的に連絡を取っててね…、春先にはここへ見えて、何もないということだった。全く何も…」
「そうですか…」
「…お嬢さん、もしよかったらAさんと会ってみるかい?」
「えっ…、お会いできるんですか?」
「あなたもAさんと似たような思いがありそうだし、彼の方はかえってあなたみたいな人と話すことは歓迎すると思うんだよ。ああ、こういう仕事に就いてるんで、あくまで私個人からってことで住所を教えるから。個人情報を漏らしたとかってのは勘弁してね(苦笑)」
「もちろんです。ご迷惑はおかけしません。あのう…、できれば早めにお願いしたいんですが…。私は今からでも構いませんので」
「うん。なら、今電話してみよう」
多田はその場で携帯からAに連絡すると、運よく先方の携帯につながった。
そして、律子の前で端的に用件を述べ、今これからってことでアポイントもとってくれた。
「なら、これ住所ね。あと、地図を書くから…」
「何から何まですいません。うっかり携帯を家に置き忘れてきてしまったので…」
いろんな貴重な話をしてくれた上、親切にAとの仲立ちまでしてくれた多田に”嘘”をついたことで、律子にはちょっと心が痛んだ。
”警察が私を探し当てるのは時間の問題だ。急がなくちゃ…”
ノートに地図を書いてくれている多田を見つめながら、律子は胸の中でこう呟いていた。
それは決意も新たに…。