※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***


「ねぇ、今日もダメなの?」


 誰かがエーヴァルトの袖を引く。見れば、エーヴァルトの取り巻きの一人が眉間に皺を寄せ、彼を真っ直ぐに見上げていた。


「あぁ――――」


 そう口にしつつ、エーヴァルトは小さくため息を吐く。グラディアにはああ言ったが、中にはエーヴァルトに対してファッション以上の想いを抱く者がいた。


(参ったな)


 エーヴァルトからすれば、女の子は皆可愛いし、一緒に居ると癒される。チヤホヤされるのだって悪い気はしない。折角モテているのに冷めた対応をする男に対しては、馬鹿だなぁとさえ思う。
 だけど、自分が抱く以上の感情を寄せられると、途端に面倒に感じてしまうのだ。

 だからこそ、エーヴァルトはそういう人間を必要以上に自分のテリトリーに踏み込ませないようにしていた。自分は触れるに向かない偶像なのだと、相手に知らしめる。そうすれば、女の子たちが一線を超えてくることは無い。その筈だった。

 エーヴァルトを変えたのはグラディアだ。彼女がいとも簡単に線を飛び越えたから、エーヴァルトの調子がくるってしまった。あんな風に『恋人にしてほしい』なんてことを言う人間が現れるなんて、エーヴァルトは想像したことも無かった。


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