※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(本当にアザゼルって優しい人だったのよね……)
ここ数日感じたこと。
もしかしたらアザゼルは、婚約者のサラがずっと側にいることで、本当は別に話したい人がいたとしても、そうできなかったのではないか。ずっとずっと自分を押し殺してきたのではないか。そんな風に感じるようになっていた。
(とはいえ、付きまとうのは止めないけど)
心に矛盾を抱えながら、サラは必死でアザゼルを追いかける。
するとその時、何かがサラ目掛けて勢いよく飛んできた。
「あっ……!」
避けようとそう思うのに、身体はうまく動かない。サラは腕で頭を庇いながら思い切り目を瞑った。その途端、バン!という大きな音が周囲に響く。けれどサラの身体に痛みはなかった。
(ど、どうして……)
目を開けると、目の前にはアザゼルがいた。サラに覆いかぶさるようにして、眉を顰めている。
「アザゼル……」
「怪我はないな?」
ぶっきら棒にアザゼルが尋ねる。サラは必死にコクコクと頷いた。
どうやらぶつかったのはボールらしい。硬そうな材質のボールがアザゼルの近くに転がっていた。
アザゼルはそのままボールを持ってどこかへ行ってしまう。けれどサラは、もうアザゼルを追いかけなかった。
目頭が熱い。心臓が張り裂けるように痛かった。
そのままサラの足は、とある場所へと向かっていた。
ここ数日感じたこと。
もしかしたらアザゼルは、婚約者のサラがずっと側にいることで、本当は別に話したい人がいたとしても、そうできなかったのではないか。ずっとずっと自分を押し殺してきたのではないか。そんな風に感じるようになっていた。
(とはいえ、付きまとうのは止めないけど)
心に矛盾を抱えながら、サラは必死でアザゼルを追いかける。
するとその時、何かがサラ目掛けて勢いよく飛んできた。
「あっ……!」
避けようとそう思うのに、身体はうまく動かない。サラは腕で頭を庇いながら思い切り目を瞑った。その途端、バン!という大きな音が周囲に響く。けれどサラの身体に痛みはなかった。
(ど、どうして……)
目を開けると、目の前にはアザゼルがいた。サラに覆いかぶさるようにして、眉を顰めている。
「アザゼル……」
「怪我はないな?」
ぶっきら棒にアザゼルが尋ねる。サラは必死にコクコクと頷いた。
どうやらぶつかったのはボールらしい。硬そうな材質のボールがアザゼルの近くに転がっていた。
アザゼルはそのままボールを持ってどこかへ行ってしまう。けれどサラは、もうアザゼルを追いかけなかった。
目頭が熱い。心臓が張り裂けるように痛かった。
そのままサラの足は、とある場所へと向かっていた。