※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***


「おはようございます、アンブラ様っ」


 陽光の如き満面の笑み。その光はあまりにも眩しく、朝から酷く胸焼けがする。


「――――本当に朝まで居座ったんだな」

「はい! アンブラ様の寝台はふかふかで、とても寝心地が良かったです」


 ハルリーはそう言って微笑みつつ、嬉しそうに布団を抱き締める。


「……おまえの部屋の調度類は、俺よりも良いものを準備している」

「そうでしたか! ですが、わたくしの寝室にはアンブラ様がいらっしゃらないでしょう? ですから、明日も明後日も、わたくしはここで眠ります」


 アンブラの意図することを明確に読み取りつつ、ハルリーはきっぱりと言い放つ。屈託のない笑み。けれど、そこはかとなく大人の色香が漂う。


「居座られたところで、俺はおまえに手を出さないぞ」

「ええ、それで構いませんわ」


 そう言ってハルリーはクスクス笑う。


(解せない)


 アンブラは眉間にそっと皺を寄せた。


「だったら何故、俺の寝室に?」

「夫婦ですもの。愛がなくとも一緒に眠って然るべきでしょう?」


 キョトンと目を丸くし、ハルリーは小さく首を傾げる。


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