※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「……ずっと気になっていたのです。あなたには承認欲求というものが全くないから」


 元々の能力が低いから? 家族仲が悪いから? 己自身に興味が無く、期待も抱いておらず、どうでも良いと思っているから? だから『誰かに認められたい』と思わないの?――――ティアーシャは最初、そんな予想を立てていた。

 だけど、ノアは己を大事にしているし、決して志が低いわけでも無い。何事にも一生懸命に取り組んでおり、堅実に将来設計をしている様子が窺える。

 自分と正反対の人間なのだろうか――――そんなティアーシャの考えは、完全に間違っていたようだ。


「ねえ、ノア様。あなたはどうして、いつもそんなに満たされているの?」


 ティアーシャはそう言って唇を噛む。
 違う。本当に知りたいのはそちらではない。

 何故ティアーシャは満たされないのか。
 どうやったらノアみたいになれるのか。ティアーシャはそれが知りたくて堪らなかった。


(辛い。苦しい)


 どれだけ己を飾り立て、素晴らしい物に囲まれて暮らしていても、ティアーシャの心が満たされることはない。
 望めば何でも買い与えられ、類まれな美貌にだって恵まれた。
 多くの人に褒めそやされ、家族に愛されていたとしても、決して埋まらない溝がある。
 決定的に足りない何かが存在する。




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