※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 心臓が高鳴る。さっきトミーにしたときみたいに冷静では居られない。

 しっかりと、頬の位置を確認してから目を瞑る。それから勢いをつけて唇を下ろせば、柔らかな感覚があたしを包み込んだ。


「んっ……」


 片手で腰を、もう片方の手で顔を固定されて、全身がビクとも動かない。
 頬ってこんなに柔らかいもの? ――――なんて愚問ね。だってこれ、頬じゃないし。ワインの風味に酔ってしまいそう。

 ちらりと瞳を開ければ、ダミアンと視線が絡み合った。


(何よ、悪魔のくせに)


 唇も吐息も、あたしも見つめる眼差しも、めちゃくちゃ熱い。


「…………っ、もう良いでしょ⁉」


 放っておいたら、色々とエスカレートしてしまいそうだ。口を拭い、膝の上から滑り降り、あたしは思い切り踵を返す。


「アイナよ、頬への口づけがまだだぞ?」

「それ以上のことしたんだから良いでしょう? もう!」


 ドS悪魔め。あたしで遊ぶのは止めてほしい。
 ピシャリと扉を閉めてから、ズルズルとその場にしゃがみ込む。


(ホント、勘弁して)


 ため息を一つ、あたしは自分の部屋へと戻った。



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