※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「ここは?」

「王都にある俺の屋敷だ」


 王都! 瞬間移動が出来るってめちゃくちゃ便利だ。
 ――――というか、見る限りこの屋敷は領地の屋敷と引けを取らないし、公爵家の資産は相当なものだろう。

 あたしの父であるラグエル伯爵もかなりの資産家だったけど、今となっては昏睡状態で口もきくことができないし。あたしには財産を継がせず、血の繋がりもなにもないメアリーを選んだっていうんだから――――。


「こら、勝手にしんみりするな」

「――――しんみりなんてしてないわ。少し、嫌なことを思い出しただけよ」


 ダミアンと契約して以降、悪魔なこの男に毎日なんやかんや振り回されて、要らないことを考える暇がなかったから。


(だけど)


 一度思い出してしまうと、中々忘れることができない。


 もしもあたしに魅力があったなら、お父さまはあんな遺書を残さなかった。
 ラファエルは心変わりをしなかった。
 家を追い出されることだってなかった。

 そう思うと、苦しくてたまらなくなる。

 復讐なんて馬鹿らしい。あたしがメアリーや義母に逆恨みをしているだけ。悪いのはあたしの方なのに――――。


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