続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「は?どういう意味?」

颯が、康二の胸元を掴み上げている掌に、グッと力を込めた。

「颯、お前は勘違いしているようだから、言っておこう。俺が、瑞季を捨てた訳じゃない。瑞季は、何も持たない自分では、俺に相応しくないと言ってね、自ら身をひいたんだよ。まさか、お前を身籠もってるとは思ってなかったがね」

心を切り裂くように、見えない針が垂直に貫通していく。颯のお母さんは、自分が安堂不動産の社長である康二に相応しくないと身を引いた?

「嘘つけっ!鼻からホステスの母さんとは遊びだったんだろ!麗夜の母親の後ろ盾に目が眩んだアンタは、俺と母さんを捨てた……母さんは、働き詰めで、気づいた時には、病気が、進行してた。全部……全部アンタのせいだっ!」

「話にならないな」

康二は、颯の掌を振り解くと、呆れたように、溜息を吐き出した。

「ま、美弥さんが、どう思うかだけどね……実際、私やお前のように持っている人間の隣に、持っていない人間が居るのは、想像以上に、心の負担になるからね」

康二の言葉が、重くのしかかってくる。御曹司である颯の隣に居るためには、それ相応の家柄なり、地位などが求められるのは、当然の事だ。そして、それが分かっていながら、今、私は、颯の側にいる事が、全く苦しくないかと問われたら、きっと答えられない。

颯に、私は、似合わない。

そんな事分かりきっている。

それでも、颯の隣に居る事を諦めたくない。颯の手だけは、離したくない。ずっと側に居たい。私は、手に持っている、かすみ草の花束をキュッと握りしめた。
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