続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「何してんだよ」
『冬宮家之墓』と刻まれた墓石の前で、両手を合わせて瞳を閉じていた康二は、僅かに体を揺らすと、切長の瞳を開いた。
「お前か……たまたま近くに来たからな。ついでだ」
颯が、康二と目を合わすようにして、立ち塞がった。
「二度と来んなよ、母さんがアンタに会いたいとでも思ってんのかよっ」
その声色は、颯のものじゃない程に冷たい。
颯は、康二の事をやはり許せない気持ちが、大きいのだろう。自分とお母さんを捨てて、銀行頭取の麗夜の母親と結婚した康二の事を。
「ふん、瑞季は、俺に最後まで惚れていたからな、ま、ホステスの割には、いい女だった。それにお前というガキも、産み落としてくれていて感謝もしている」
「ふざけんなよっ!母さんの名前も呼ぶなっ!」
「だめだよっ、颯っ!」
颯は、康二のネクタイごと掴み上げ、睨みつけている。
「……美弥は黙ってろ」
私は、颯の腕から、そっと手を離すと唇をきゅっと結んだ。
「しかし、美弥さんを、まさか瑞季に紹介する為に連れてきたのか?やれやれ……瑞季の墓にまで、連れてくるなんて、瑞季も嘆き悲しんでいるだろうな」
「俺が、母さんに誰を紹介しようが、アンタに関係ないよな」
「颯、いい加減にしなさい。何故わからないんだ?瑞季は、お前には、良家のお嬢さんとの結婚を望んでいる。何度もいうが、安堂家の跡取りの自覚を持て」
「黙れっ!母さんは、俺の選んだ人なら、喜んで祝福してくれる。俺は母さんの息子だから分かるっ」
康二が、鼻を鳴らして笑った。
「それは違うな。瑞季は、少なくとも、自分と同じように、何も持たない相手との結婚は、望んだりしない」