続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「……安堂社長からは、有難い事に、安堂不動産で使用する建築金物の一部をうちから買ってくれると言われて、業務提携もしたんだ。だから……少しずつだけど、借りたお金は、返していくつもりだから……美弥ちゃんにも」

「お金なんて要らないっ」

和志の顔が、ぼやけている。

もう、涙は止まらない。

「颯だけ居たら…ひっく……それだけで良かったのに……」


ーーーーこんな事、到底信じられない。何年も会ってない養父が、低金利の融資と業務提携と引き換えに、私に知らせず、颯との婚約破棄のサインをするなんて。


「……和志さんは、結局、私の幸せなんてどうでも良かったんですよね……」

吐き出した辛辣な言葉は、自分の声とは思えないほどに、低く冷たい声色だった。

「本当にすまない……でも美弥ちゃんのおかげで、僕ら家族も工場の従業員達の暮らしも守れるんだ。僕は、この決断を……後悔しないように一生懸命働くから。美弥ちゃん……どうか自分勝手な僕を……憎んで欲しい」

「……勝手な事言わないでよっ!」

こんなに人に対して、怒りをぶつけて感情的になったことがあっただろうか。怒りを通り越して絶望と悔しさで、頭がどうにかなりそうだ。

「美弥ちゃん!」

気づけば、私は喫茶店から飛び出していた。もう目の前の誓約書も和志の顔も、見ていられなかった。
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