続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「ひっく……颯……」


ーーーーポツン。ポツン。と顔にあたる粒が、空から降ってきた事に気づく。

もう、雨でも涙でもどちらでも構わない。

心が痛くて、壊れてしまう。

ポケットで、震えるスマホに手を伸ばそうとして、私は止める。

おそらく颯だ。何か帰りに買って帰るものがあるか、いつも連絡をくれるから。でも今は、とてもじゃないけど、颯とは話せない。

颯に迷惑をかけるのだけは、嫌だった。

それなのに、颯の声が堪らなく聞きたい。

大丈夫だよって、キツく抱きしめて欲しい。


「颯……苦しいよ……」


この事を何もかも話せば、きっと颯は、康二と対立してでも、どんな手段を使っても、それでも、何も持たない私を側においてくれるのだろう。

でも、そうなれば、和志の工場や従業員、家族は、どうなるんだろう。

自分の事だけ考えたらいい筈なのに……。

あんな風に頭を下げる和志が、どうなってもといいと割り切れるほど、私は、強くもなれけば、冷徹にもなれない。

ただただ、涙だけを落とすだけの弱い人間だ。
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