続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「ちなみに美弥との結婚認めないんだったら、副社長は辞任する。麗夜にくれてやる。ちなみにアンタの戸籍からも出て、俺等の子供には、一生会わせない」

「颯っ!」

「どうする?選んでよ。俺取るのか、会社とるのか」

「お前……自分が何言ってるのか分かってるのか!」

「あぁ、分かってる。美弥と子供が居たら、何もいらない。会社も肩書きも安堂の家も全部捨てても構わない!」

康二は、暫く黙っていた。そして、手帳を取り出すと、中に挟んでいた、一枚の写真を見つめた。そこには、親父と母さん、そして、まだ3歳程の俺が、幸せそうに笑って写っている。

「……お前の言う通りなのかも、知れないな」

「何が?」

「何度も後悔したよ、この写真を見るたびにな。何もかも捨てて、お前と瑞季と三人で暮らせたら、どんなに良かっただろうってな。……ただ、実際、女と子供を守るには金がいる。そして、俺は、安堂家の一人息子として、安堂不動産を守る義務があった」

康二は、デスクの鍵付きの引き出しから、書類を取り出すと、俺に見せつけるように、真っ二つに手で裂いてゴミ箱に投げ捨てた。

「……婚約破棄及び誓約書は、一旦破棄しておく……」

「それ、結婚認めてくれたって事でいいよな?」

俺は、デスクに両手を突いて、康二を覗き込んだ。

「俺は、美弥一人には、育てさせねぇから。父親のやり方なんて分かんねぇけど、俺は、子供は、美弥と一緒に育てたい。それに、美弥の居ない人生なんて、俺には何の意味ないから」

俺は、言いたかった全ての言葉を吐き出すと、康二に背を向けた。

「颯」

俺は、振り返って康二と視線を合わせる。

「安心しろよ。俺は、アンタが出来なかったことをやってやる。会社も好きな女も子供も全部諦めない!全部守ってみせるから」

そして扉のドアノブに手をかけた時、康二の掠れた声が、静かに響いてきた。

「早く連れ帰ってきなさい……」

俺は、振り返らずに扉を閉めた。

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