続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「どうぞ」

麗夜は、専務室の扉を開けると、私を振り返りながら、黒革のソファーに掌を向けた。

「失礼します……」

部屋の広さも内装も、颯の副社長室とほとんど同じだ。違うのは、更衣室がない。その代わりに、その場所には、アンティークの木製本棚が置いてある。

麗夜は、読書が好きなのかもしれない。大きな本棚には、洋書も合わせて数えきれない量の本が、びっしりと並べられている。

「本が好きなんでね」

私の視線に応えるようにそう呟くと、麗夜は、デスクの引き出しから、ファイルを1冊取り出した。

ガラステーブルにそれを置くと、麗夜は、迷わず私の隣に腰をおろした。

「……え、……あの」

ソファが沈んで、麗夜の香水の匂いが、ふわりと鼻を掠める。私は、緊張から、こくんと唾を飲み込んでいた。

「はい、これがアウトレットモールのキャンペーンモデルの候補だよ、今年の大河ドラマの主役女優から、SNSのフォロワー数10万超えのインフルエンサー、人気料理家、売り出し中の新人モデルと、様々なジャンルから、選別してある」

パラパラとファイルを開く、麗夜の手元を覗き込めば、芸能に、疎い私でも見たことある綺麗な女性ばかりが並んでいる。

「どう?」

「あ、どの方も素敵だと思います」 

「で?」

「えっと……今回オープン予定のアウトレットモールは、海外から初上陸する商品も多いですし、隣接する、システムキッチンの展示場との兼ね合いも加味して、料理家の方が、良いかなと思いました……確かその方、お子さんもいらっしゃいましたし、メインターゲットである家族連れにも、この方にPRとして頂けたら、集客に効果的かと思います」

麗夜は、大きな掌を合わせると、パチパチと大袈裟に拍手した。

「意外だったな。もっと何も持たず、何もできないのかと思ってたけどね。正解、僕も同じ意見」

麗夜が、ソファーに片手をつくと、私の方へさらに距離を詰めた。
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