続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
いくら颯の名前を呼んだって、無駄なのは分かっているのに、呼ばずにはいられない。麗夜の掌が、スカートを捲りあげながら入ってくる。


「美弥っ!」

ふいに、乱暴に開かれたドアに、私は、言葉が出ない。

「何してんだよ!」

千歳が、麗夜を後ろから首元を掴んで床に引きずり倒し、私のソファから引き上げた。

「美弥?大丈夫か?」

「千、歳く……」

千歳の顔が、歪んで、よく見えない。

「痛ったいな。北沢課長は、何?クビになりたいの?」

スラックスについた埃をパンパンと払い落としながら、麗夜が、千歳を睨んだ。

「こっちの台詞ですけどね、強姦未遂で被害届だしてもいいんですよ。今なら、貴方の唾液も検出されるでしょうしね」

麗夜は、涼しい顔をして、唇を持ち上げると両手を腰についた。

「僕に命令しないで欲しいな。どうせ、警察なんて行ける訳ないんだから。安堂不動産の長男が、強姦未遂なんて、アウトレットモール計画も丸潰れだし、颯だって、責任とって、副社長退かないといけなくなるんじゃない?」  

(やっぱり私を使って、颯を陥れる気なんだ……)

それだけは、絶対に嫌だ。颯の足を引っ張る事だけは……。

「綾乃さんどうしたの?コワイ顔してさ?」

怒りから、足が震えてくる。触れられた悔しさから、勝手に掌に力が入る。

「……美弥、部屋から出てくれる?」

千歳が、麗夜を睨みあげたまま、静かに左手を握りしめた。

「千歳くんっ、ダメだよ!もう、いいから。行こう」

「でも、美弥っ」

「いいの!こんな人に何されても全然平気!大丈夫だからっ」

私は、千歳の腕を強く引っ張ると手提げ鞄を拾い上げて、専務室の扉を閉める。

扉を閉める瞬間、ドアの隙間から麗夜の冷たい笑顔が見えた。
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