続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
(早く、事務所に戻らなきゃ……そうじゃないと……) 

とっくに昼休みは終わっている。

午後1番に、担当しているお客様から質問されていたシステムキッチンのオプションについて返答することになっている。 

私は、ブラウスのボタンを留め直しながら、エレベーターへと早歩きで歩いていく。少しでもさっきの事を振り返れば、涙はきっと止まらない。仕事の事だけを考えておかないと、涙は、あっという間に転がり落ちる。

「美弥、ちょっと待てよ」

千歳の声が聞こえるが、私は振り返らずに、ちょうど止まっているエレベーターの開閉ボタンを押すと、体を滑り込ませて、事務所のある3階のボタンを押した。

口を開けば、かろうじて堰き止めている涙は、もう転がる寸前だ。私の後を追って、千歳もエレベーターに乗り込むと、会議室フロアの5階を押す。

「美弥、こっち向いて」

「嫌……」

千歳は、私の手首を掴むと、エレベーターを5階で降りる。

「千歳くんっ、離して」

「何にもしないから。専務とあんな事があって、そんな、今にも泣き出しそうな顔してる美弥、働かせられないから」

千歳は、一番手前の会議室の扉のプレートを『使用中』にしてから、私を中に入らせ、座らせた。
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