続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
颯が、私の肩にこつんと身体を当てた。

「どした?ボケっとして?何かあった?」

「ううん、何でもない……颯が、子供扱いするから……」

「それでそんな顔してんの?美弥なんて、俺から見たらさー、子供って言うより、人間に猫の耳と尻尾が生えた子猫みたいだからな」

「え?!猫に見えてるの?」

颯が、ぶはっと吹き出した。

「んなわけねぇだろ。イメージ。ま、誘拐してくださいとばかりに、美弥は、隙だらけだからさ、なるべくお迎えきてやるから」

イメージ?私が颯のことが、意地悪なヒョウに見えてるのと一緒なのかも知れない。

それでも、やっぱり、子供扱いされて、少しだけ膨れた私の機嫌を取るように、颯は、繋いだ掌の指先を絡めると、駐車場へと続くエレベーターに乗り込み、B1ボタンを押した。

「颯、ごめんね……颯だって、千歳くんだって、忙しいのに」

颯が、屈んで私の瞳を捕まえる。

「迷惑かけてるとか思ってねぇよな?」

「だって……迷惑でしょ。お荷物になってる気がして」

「ばか。そんな風に思ってたら、迎えに来ねぇし……美弥が、心配なのがわかんねぇのかよ」

「心配かけて、ごめんね」

実花子みたいに、いつか強くて凛とした女性になりたい。仕事ももっと頑張って、会社に貢献して、少しでも認めてもらいたい。早く自分自身が、颯の隣にいてもいいと、思える位には変わりたい。

「何考えてる?美弥はさ、ただ、俺の隣で笑ってたらいいから」

胸が、ぎゅっとなる。その胸の痛みを抱えたまま、颯のスーツの裾を親指と人差し指で摘んだ。

「……颯、少しだけ、ぎゅっとして……私……」

気づいたら言葉が溢れて口にしていた。颯がどうしようもなく好きで堪らない。颯の隣にずっと居たい。

「いつから甘えん坊になった?」 

意地悪を言いながら、颯は、すぐにカバンを床に放り出して、私を呼吸が止まりそうな程にキツく抱きしめる。

「颯、私ね……ンンッ」

颯の唇で、伝えたい言葉は、紡げずに塞がれる。

「ンッ……颯……息、できな」

「ヘタクソ、ちゃんと舌だせよ」

颯は、私を包み込んだまま、言葉とは真逆の慈しむような、優しいキスをする。しっかり、踏ん張っておかないと、すぐに足元から蕩けてしまいそうになる。

何度も何度も熱を交換しているうちに、地下駐車場に到着し、エレベーターのドアがゆっくりと開いた。
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