続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
ーーーープルルルル。

目の前の内線が、光り手を伸ばしかけた掌を私は、一瞬止める。内線番『005』専務室からだ。

(麗夜さんだ)  

あの日以来、麗夜は、私を仕事中に呼び出すこともなければ、通路ですれ違っても、こちらを見ようともしなかった。

私の戸惑っている様子に気づいた麻美が、小さな声で、「課長、席外してるし、私出ようか?」と囁いた。

私は、小さく首を振ってから、一呼吸して受話器を上げた。

「はい、もしもし綾乃です」

『あ、もしもし、僕だけどね、綾乃さんに聞きたいことがあって』 

受話器から聞こえる麗夜の声は愉快そうだ。途端に嫌な胸騒ぎがしてくる。

「何でしょうか?」

『綾乃さんさ、モデルの木野英玲奈って知ってる?』

私は、その名前に見覚えも聞き覚えもあった。

コンビニにバイトをしていた時、入荷してきた、雑誌を陳列しながら、何度もその名前と表紙を飾る綺麗な女の子を見たことがある。

「木野……英玲奈さんって……20代ファッションブランド雑誌『ORION』の専属モデルですよね?」

『さすが、もとコンビニ店員だけあるね。正解だよ』
< 75 / 262 >

この作品をシェア

pagetop