切ない両想い
目の前の並木道を、ゆっくりと、仲睦まじい老夫婦が過ぎ去っていく。

かのグレタ・ガルボが、今までに見た何よりも美しいと言った光景。

ダンは、私の手を自分のポケットに入れ、老夫婦を見ながら、

「あんな風になれたらいいな…」

ポツリと呟いた。

「なれるわよ」

私がそう言うと、素早く、ほんの一瞬キスされた。

「ちょっと…!」

周りを気にして慌てる私を横目に、

「じゃあ、そろそろ次の物件見に行こう」

全くもう…。

でも、なんだろう?この幸福感は。
< 10 / 12 >

この作品をシェア

pagetop