【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
「わたくし、もう結婚してますけど……?」




「……え?」


エイヴリーの間抜けな顔に少しだけ心が晴れやかになった。

カサンドラは床に落ちた本を拾い上げて、パンパンと汚れを払った。

そう……エイヴリーと再び愛を育むなんて、この世界がひっくり返ったってありえないことだ。

エイヴリーに裏切られたカサンドラは、心が激しく痛んでいた。

まるで針で刺されているような感覚にカサンドラはずっと苦しんでいたのに……エイヴリーは再びカサンドラと共に居ようというのか。

(本当、無神経すぎて信じられないわ)

今のエイヴリーを見ても以前のような愛しい気持ちは全く湧き上がってこなかった。
むしろ心にあるのは嫌悪感と、二度と顔を見たくなかったという思いだけだ。

(あんなに愛していたのに……嘘みたい)

むしろエイヴリーの顔を見ていると吐き気すら感じる。
カサンドラは思いきり顔を顰めた。

この勘違いを通り越して、有り得ない夢を見ている元婚約者に言ってやりたいことは山程あった。
本についた汚れを払うように、カサンドラにとっては埃と同じ。
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