【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
コーディ殿下は残念ながら何が起こったのか理解出来ていないようです。
彼はアンバー様と出会う前は最低限の一線は越えることはありませんでした。
ですが今はすっかりと甘い誘惑に唆されて、完全に腑抜けてしまったことを残念に思います。 

祝いの場で、自分の事情を押し付けて場を壊すようでは、まだまだどころか最悪でしょう。
幼稚な理由で婚約を解消しようとするコーディ殿下の思惑が次々と露見する事で国王陛下達は国を憂いたに違いありません。

それにわたくしは先程も申し上げた通り、国王陛下のサインをもらい準備は万端でした。
もうこの寸劇が始まった時点で終わりは決まっていたのです。


「アンバー嬢」

「ひっ……!」


ガルグ殿下に名前を呼ばれたアンバー様は大袈裟な程に肩を揺らす。


「コーディと共に来るように伝言を預かった」

「は、ひ……!」

「子爵には母上から話があるそうだ。今日中には手紙が届くだろう」


ガルグ殿下の狼のような鋭い眼光と低い声は相手を威圧するようです。
ブンブンと首を縦に揺らすアンバー様に、先程の余裕は一切ございません。
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