【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
夫人は涙ぐんで私を抱き締めました。
これで今後の関係もバッチリです。
最後まで頭を下げ続けるマスング公爵と夫人を見送ります。


それから一週間経ちました。


わたくしの前に一人の令嬢が立ち塞がります。
バレットと楽しげに話していた令嬢、バスレフ子爵の後妻の娘……ミランダ様です。


「ウフフ、ご機嫌よう!ヴァレンヌ様」

「ご機嫌よう、ミランダ様」


勝ち誇ったような笑みを浮かべているミランダ様に嫌な予感を感じつつも挨拶を返します。


「ヴァレンヌ様に申し訳ない事をしたって思ってぇ…」

「あぁ、お気になさらず」

「令嬢達からも評判の良い優しいバレット様を……本当にごめんなさぁい」


恐らくミランダ様は、わたくしの悔しがる顔を見にきたのでしょう。
随分と挑戦的な方のようです。
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