落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 いろいろと解せない様子だったヴィーは、その提案を聞いて一転笑顔になった。整った容姿であるのに、よく笑いよく怒り、その表情はころころと変わる。時に感情的になったりするけれど、彼には嘘がない。表裏がなく誠実だ。
 それに比べて私はどうだろう。獣人だと嘘を吐いて安穏と生活している私は、やはり彼の嫌う「嘘」を吐く人間の仲間で……。
「パトリシア? どうかしたか」
 思いに耽っているとヴィーが覗き込んできた。
「は? あ、いえ。お腹が空いたなあと思って」
「はははっ! そうか、俺もだ! リンレン、夕食はなんだ? 出来たらキノコのポットパイが食べたいのだが」
「無茶言わないで下さい。今からだと出来上がりが真夜中になってしまいます。キノコのクリームパスタで我慢して下さいね」
「おお! 問題ない。クリームパスタも好きだぞ!」
 リンレンとヴィーは笑いながら、竈の前に移動した。
「パトリシアお姉ちゃん、あたしたちは薬草茶を用意する?」
 ホミが私の手を握り締め、見上げて微笑む。そうだわ、変に思い詰めてホミたちに心配をかけてはいけない。今は新しいお店のことに集中すべきだわ。  
 そう決心すると、ホミに微笑み返した。
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