落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「ありがとうございます! あの、それで、昨日みんなで話し合ったんですが」
「うん? なに?」
「糸を無料でもらうのは申し訳ないので、アミュレットが売れた分の何割かをこちらにお支払いしようかと」
 それは、昨夜夕食時にみんなで話し合ったことだ。アミュレットが売れるのはいいけれど、何回も大量にもらうのは気が引ける。だから少しでも糸の代金を支払おうと思った……のに、トネリもマゴットも怒ったような顔をしたのだ。
「要らないわ。前も言ったよね。申し訳ないなんて思う必要ないって」
「そうさ。おれたちは、リンレンやホミ、それにパトリシアを家族だと思ってるんだ。気をつかうなよ」
「はあ……でも」
 それではこちらの気が済まない。と言っても、この様子じゃ聞いてもらえそうもないわ。どうすればいいかしら。なにか、代金に変わるお礼……。
「あ! それなら、私がアミュレットをおふたりに贈るのではどうでしょうか。とても糸の代金の代わりにはなりそうにないですが、せめてものお礼に」
 いい案とは言い難いけれど、こんなことくらいしか私には出来ない。
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