落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 この温かで優しい友人たちに出会えてよかった。そう思うとともに、心優しきクマ獣人夫婦に、どうか可愛い赤ちゃんが出来ますようにと、願わずにはいられない。
 
 お昼前、私とホミが糸をもらって帰って来ると、ぐったりした様子のリンレンがいた。理由を聞くと、私たちが出掛けたあとに十人くらいが注文に来て、その対応に忙しかったのだとか。アミュレットの注文に加え、薬草茶も出すのだから、新しい看板に着手する暇もなかったらしい。
「この分だとお昼からも何人か来ますね……昨日がピークだと思ったのに考えが甘かった」
 机に突っ伏しながらリンレンが唸るように言った。
「うん。でも、お昼からは三人いるからね。私が注文を受けながら記帳もして、ホミが薬草茶を出す。それならリンレンが看板を作れるんじゃない?」
「パトリシア……大事なことを忘れています」
「え? なに?」
 とぼけたように返すと、リンレンがむくっと顔を上げた。
「アミュレット制作の仕事……溜まっていますよ」
「あ……」
 わ、忘れていた。そうだった、受けた注文をどんどん捌いていかないと、お客様を待たせてしまうわ。
「忘れていましたね?」
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