落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ～絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き～

「う……まあ、徹夜すればなんとかなるでしょう」
「ダメですっ！　一日中働き詰めでは、パトリシアが倒れてしまいます！」
　リンレンは厳しめに言った。前に聞いたのだけど、リンレンとホミの両親は、過労死だそうだ。仕事に追われ、昼夜問わず仕事をしていたため、体調を崩したのだとか。
　だから彼は、こうも厳しい口調で私に怒ったのだと思う。
「ご、ごねんね。徹夜はよくないね、うん。でも……そうなると、手伝いが欲しいわよね」
「そうですね。どこかに時間の空いている人、いませんかねえ……」
　リンレンが呟いた直後、ホミの耳がピーンと立ち、窓の外を振り返る。
　何事?　と身構えると、ずうんというお馴染みの揺れが私を襲った。
　あ、ヴィーね。そういえば昨日の帰り際、見回りを済ませてから来るって言っていたような気がするわ。
「やあ！　パトリシア！　昼ご飯は食べたか？」
　リンレンが扉を開けるのも待たず入って来たヴィーは、両手に瑞々しい果物を抱えている。
「ヴィー、こんにちは。ちょっと話し合いをしていて、お昼はまだなんです」