落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 合間でふと耳を澄ますと、ヴィーとお客さんの楽しげな掛け合いが聞こえてくる。そこにホミの声も混じると、楽しさが二倍になった気がした。
「ふう。今日はこれで終わったか?」
 夕刻、最後のお客さんが帰ると、ヴィーは大きく背伸びをした。
「お疲れ様でした、ヴィー。もうこの時間からは誰も来ないと思います。みなさん夕食の支度がありますからね」
「そうか、そうだよな。しかし、今日は楽しかった! とても有意義だったぞ!」
「有意義……ですか?」
 会話を交わしながら、私とヴィーとホミは店舗から自宅へと移動した。自宅では、リンレンが夕食の支度をしている。その美味しそうな香りを胸いっぱいに吸い込みながら、テーブルに着いた。
「ああ。俺は戦がなければ民に憂いなどないと思っていた。だが、大なり小なり、人には悩みがある。王としてその悩みに向き合えたことがとても嬉しかった! こんな機会を与えてくれて感謝している」
「感謝だなんて! こちらこそ手伝っていただいて、アミュレット作りが捗りました。昨日の注文分の半分は出来たのですよ。これもヴィーの手伝いのおかげです」
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