落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 長年の悩みとか、体の不調、様々な願いがあったけれど、アミュレットのおかげで、大方いい方向に向かっているそうだ。彼らに笑って返事をしながら、私はふと考えた。
 彼らのアミュレットに込める願いは、個人の切なる願望だけれど、不思議なことに、生物ならば当然願うだろうものはなかった。それは「不老不死」になりたいだとか「死んだ人を生き返らせてくれ」という類のもの。もちろんアミュレットに願ったところで叶いはしないけれど、これがもし、人間だったなら何人かは間違いなく願っているはずだ。だけど、獣人たちは誰ひとりとして願わなかった。それは、獣人や幻獣が、やがて来るべき死を自然のサイクルのひとつと捉えているかららしい。死を恐れないわけではないけれど、それよりは「今を懸命に生きる」ことを大事にしていると、リンレンが語ってくれた。
「お姉ちゃん、ねえ、お姉ちゃん!」
 気付くと男の子が私を見上げ話しかけている。ホミと同年代の男の子でキツネ耳。あ、これは近所の……。
「うん、なあに? キド」
「あのさ、僕にもアミュレット作ってよ! かっこいいやつ!」
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