落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 バーディアは、宣戦布告したものの、まだドーランへの入り口を見付けていないのね。つまりこの迷いの森付近で小競り合いが続いていると……。
 私は森の奥に目を向けた。霧の向こうに、神秘に包まれた幻獣の国がある。幻獣たちは一体どんな風貌で、どんな魔術(力)を使うのか。師匠ライガンでさえ、幻獣を見たことがないと言っていた。夢物語にしか出て来ない彼らの近くにいると思うと、不思議と胸が躍る。普通の人なら恐怖を抱くだろうけど、私は幻獣に会ってみたくてたまらなかった。
 霧の彼方に思いを馳せていると、突然、森の奥から子どもの悲鳴が聞こえた。甲高く細く、恐怖に彩られた声は、周囲の木々を奮わせている。
 な、なに? もしかして子どもが迷い込んでいたのかしら?
 それなら大変だわ。早く森の外に連れ出してあげないと!
 続く悲鳴を聞きながら、私は走り出した。兵士たちが侵入したと思われる道をたどり、一心不乱に突き進むと、やがて少し広い場所に出た。
 そこには五人の兵士がいて、なにかを取り囲んでいるように輪になっている。
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