落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 私はその「なにか」を確かめようと、恐る恐る近付く。すると、兵士の足の隙間から驚愕の光景を見てしまった。
幼い子どもが、兵士たちに殴られながら地面に蹲っている。
 腕や足には彼らに傷付けられたのか痛々しい生傷があり、血が滲んでいた。
 なんて酷い!早く止めないと!と、走り出そうとした私は、目に飛び込んで来たものを見て一瞬足を止めた。
 子どもの頭には、ウサギの耳のようなものが生えていたのだ。明らかに人間ではない。もしかして……幻獣?
「わああん、痛いよう! 助けて、もうやめてー!」
「おい、ガキ。さっさと入口を言え! もっと痛い目に遭いたいのか?」
 兵士のひとりが長い耳を掴み、蹲る子どもを無理矢理立たせる。すると子どもは、泥だらけの顔でぽろぽろと涙を零し、一生懸命に首を振った。
 その光景を目の当たりにし、私の怒りは限界を越えた。
 そして、込み上げてくる怒りのままに、子どもの耳を掴んだ兵士に体当たりを食らわせた。
「うわっ! なんだ?」
 バランスを崩した兵士がとっさに子どもを離すと、うまくキャッチして走り抜け、勢いよく森を駆け抜ける。
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