落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 リンレンが言った。
「好き……だと?」
「はい。僕にはそう見えました。たぶんみんなにもそう見えたはずです」
 見回すと、ティアリエス、ファル、トネリ、その他全員が頷いていた。
 俺は、パトリシアが好きなのか? だとすると、この感情は……。
「うだうだと考えている暇はありませんよ。このままでは、あなたは愛する人を亡くします。その時、後悔しても遅いのですよ」
「…………」
「心に従って下さい。どうしたいのですか!」
 追い立てるようなティアリエスの言葉に、ハッと目が覚めた。
 俺は、パトリシアと一緒にいたい。仕事の手伝いをしたり、食事をしたり、美しい月夜を共に歩いたり。とにかく一番近くで彼女の笑顔を見ていたいのだ。ああそうか。この感情を「愛」と呼ぶのだな。 
「パトリシアを連れて戻る!」
 言い放つと俺は、すぐさま変化して飛び立った。急がなければ彼女の命が危うい。愚かな俺が下した判断が、パトリシアの命を奪う……そう思うと、弱者のように体が震える。
 飛べ、光より早く、彼女の元へ!
 灰色の空を、俺は一心不乱に飛んだ。

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