落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
遠のく意識の中、ぼーっと視線を彷徨わせる。肌に感じる熱気も、喉の焼けつくような痛みも、もうあまり感じなくなっている。死が間近に迫っているというのに、恐れも悲しみもほとんどない。バーディア兵に森に捨てられた時は、なんとしても生きてやると思ったけれど、今はなんだか穏やかだ。
優しいウェアラビット、ホミとリンレンの命が、私の死で守られるなら安いもの。ほんのひと時だったけれど、一生分を凝縮したような幸福感に満ちていた。心残りがあるとすればふたつ。兄ダルシアに別れを言えなかったことと、不器用な王様ヴィーのこと。心配性の兄は私を探して人生を無駄にしないだろうか? ヴィーは彼自身が抱える憎しみに押しつぶされてしまわないだろうか? 忘れろとは言わないけれど、憎んでばかりいてはそのうち自分が苦しくなる。それだけが心配だけれど……ああ、もう無理。考えることも出来なくなってきた。
意識は朦朧とし、視線の先に無数の白いオーブが見える。火口付近から登ってくるオーブはとても美しく神々しく……死の世界からの迎えが来たと、そう思った。
優しいウェアラビット、ホミとリンレンの命が、私の死で守られるなら安いもの。ほんのひと時だったけれど、一生分を凝縮したような幸福感に満ちていた。心残りがあるとすればふたつ。兄ダルシアに別れを言えなかったことと、不器用な王様ヴィーのこと。心配性の兄は私を探して人生を無駄にしないだろうか? ヴィーは彼自身が抱える憎しみに押しつぶされてしまわないだろうか? 忘れろとは言わないけれど、憎んでばかりいてはそのうち自分が苦しくなる。それだけが心配だけれど……ああ、もう無理。考えることも出来なくなってきた。
意識は朦朧とし、視線の先に無数の白いオーブが見える。火口付近から登ってくるオーブはとても美しく神々しく……死の世界からの迎えが来たと、そう思った。