落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 すると、ヴィーは畏まった。それはまるで、人生で一番の重大発表をするかのように。私は頷くと、彼が話し出すのを待った。
「俺は仲間や祖先を狩られたことでずっと人間を憎んでいた。だから、お前が人間だと知って怒りが込み上げ、更に嘘を吐いていたと知り自分が抑えられなくなった。業火の山に連れていったのも、人間なら殺さねば、と思ったからだ」
 それは知っている。あの月夜に、ヴィーが話していたのをこっそり聞いていたから。
「しかし、ホミたちに真実を聞き、人間の中にも、気高い心を持つ優しい者がいると知った。悪だと思っていた嘘の中には、他人を助けるための嘘もある、そのことに気付かされた俺は、その時……自分の本当の気持ちに気付いたのだ」
「本当の気持ち?」
「ああ俺は、その、気高く優しい人間が……好きなのだ」
 ヴィーは、普段とは少し違う真剣な眼差しで言った。彼の言葉に、私は胸が熱くなるのを感じている。だって、あの憎しみに凝り固まったヴィーが、人間を認め好きになってくれたのだから。
「嬉しい、です」
「おっ? そ、そうか、ではお前も同じ気持ち……」
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