落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「ま、まあ、そういうことだ! だから俺は、全力でパトリシアを信じ助けると誓う。今はお前の気持ちがこちらに向いていなくても、誠実さを前面に出し、時に押してたまに引いて、最終的は手に入れる計画だ! 覚悟しておけ、ははははは」
 ヴィーは豪快に笑った。しかし、余計なことを言ったとは気付いていない。
 誠実さを前面に出し、時に押してたまに引く……そして、最終的には手に入れる計画? なにを? もしかして私? それって……私が知らないほうが効果的なのでは?
 生まれて初めての熱い告白をされたというのに、冷静に分析してしまう自分に驚いている。それはきっと、ヴィーのあけすけな性格が、私に安心感を与えてくれるからだ。 
 自分の中の計画を、つい言ってしまうところも可愛らしい。気さくで強くて豪快で、嘘が付けない素直な王様。竜という獰猛な種族であるからか、カッとなることもある。けれど、こうして自分の否を認め、ちゃんと謝罪出来るのは彼の美徳だ。
 そんな竜の王様に、そこはかとない魅力を感じている自分がいたのである。
 まあ、とりあえず、今の言葉は聞かなかったことにしておいたほうがいいわね……。
「では、帰るぞ。背に乗れ!」
「はい!」
 竜に戻ったヴィーは、私を乗せて大空を舞う。眼下に見えるドーランはどこまでも美しく、頬を切る風が心地よい。ああ、生きているって素晴らしい! そんな思いを胸に、私はホミやリンレンたちの元へと帰還したのである。
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