落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 それから、嬉しい報せもあった。
 マゴットが待望の赤ちゃんを授かったのだ。生まれるのはまだまだ先だけど、歓喜したトネリは、ブラウンにゆりかご用のヒノキを発注し、気が早い!とマゴットに叱られたらしい。アミュレットのおかげだと言ってふたりは感謝してくれるけれど、私は、心優しい夫婦に神様が贈り物をしてくれたのだと思っている。
 また、もうひとつ。なんと、あのブラウンに彼女が出来た。パン屋で働くミラという女性である。
 パン屋の改築に伴い、良質な木材を格安で提供したブラウンに男気を感じたのだとか。ブラウンののんびりした姿とか、飲んだくれている様子しか知らない私は、ミラが彼のどこに男気を感じたのかまったくわからない。でも、男女の仲なんて他人には計り知れぬもの。きっと、ミラにはブラウンがキラキラ輝く存在に見えたのかもしれない。
 アミュレットがもたらす少しばかりの幸運は、ドーラン全土を笑顔で包んでいく。完璧な白魔術師としては役に立たないけれど、こうしてみんなに笑ってもらえるなら、もうそれで私は大満足である。
 そんなある日の昼下がり。
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