落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
少女はハッとしたように自身の口を両手で塞ぐ。たぶん人間に情報を渡さないようにと言われているのだろう。バーディア側はドーランの入り口を探している。うっかり漏らすと命取りになりかねない。
「大丈夫よ。私、誰にも言ったりしないから」
「ほ、ほんとう?」
「ええ。安心して……さあ、早く治療を済ましてしまいましょう」
余計な話をしている場合じゃなかった、と思い出した。兵士たちの声はどんどん近付いてきている。もっと少女の話を聞きたかったけれど、そんな暇は与えてくれないらしい。
手の平に意識を集中し、少女の傷に翳す。思ったよりも深い傷もあり、少々手こずったものの、なんとか無事治療を終えた。途端に脱力感が私を襲う。しかし顔には出さない。少女に心配をかけたくないからだ。
「はい、完了よ!」
「わあ! どこも痛くない! ありがとう、お姉ちゃん!」
「ふふっ、私はパトリシアよ、よろしくね」
にっこり笑って名乗ったけれど、きっともう会うことはないと思った。
ドーランの入り口を見付けるのに、この少女はとても重要だったはず。それを逃がしてしまった私は……きっと罪に問われる。
「大丈夫よ。私、誰にも言ったりしないから」
「ほ、ほんとう?」
「ええ。安心して……さあ、早く治療を済ましてしまいましょう」
余計な話をしている場合じゃなかった、と思い出した。兵士たちの声はどんどん近付いてきている。もっと少女の話を聞きたかったけれど、そんな暇は与えてくれないらしい。
手の平に意識を集中し、少女の傷に翳す。思ったよりも深い傷もあり、少々手こずったものの、なんとか無事治療を終えた。途端に脱力感が私を襲う。しかし顔には出さない。少女に心配をかけたくないからだ。
「はい、完了よ!」
「わあ! どこも痛くない! ありがとう、お姉ちゃん!」
「ふふっ、私はパトリシアよ、よろしくね」
にっこり笑って名乗ったけれど、きっともう会うことはないと思った。
ドーランの入り口を見付けるのに、この少女はとても重要だったはず。それを逃がしてしまった私は……きっと罪に問われる。