落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 慎重に一歩森へと踏み出すと、雰囲気がガラッと変わる。結界のおかげか、ドーランの中はいつもと変わらず穏やかだけど、実際の迷いの森は、光と闇の目まぐるしい攻防戦の最中だ。闇を纏った靄が、一直線に飛んでくる光の斬撃をなんとか中和しているようだ。 
 闇の靄を生み出しているのはヴィー。彼の属性は「闇と炎」だと本人から聞いた。闇は火水風土のどれよりも強いけれど、唯一の弱点は聖属性系の「光」である。その唯一の使い手のダルシアが相手では、ヴィーもかなり苦戦を強いられているのは間違いないようだ。私の位置からは、ヴィーの黒く大きな背中しか見えず、ダルシアの様子はわからない。ドーラン側に被害が出ないのは、ヴィーが国を背にし、なんとか攻撃が届かないようにしているからだ。
 早く、ダルシアを止めなければ! と思うけれど、両者の激しい攻防のせいで、声がまったく通らない。
「ヴィー! ダルシア! やめて下さい! 戦う理由なんてないんです!」
 何度も何度もそう叫ぶ。
 すると、一度攻撃が途切れ、その間にようやくヴィーが気付いてくれた。
「パトリシア? どうして来た! 危ないぞ、早く戻れ!」
 彼は後ろにいた私を庇うように翼で覆った。
「ヴィー! どうか戦いをやめて下さい! あなたが今戦っているのは私の兄、ダルシアです!」
「兄、だと? お前の兄がなぜドーランに攻撃を?」
< 192 / 264 >

この作品をシェア

pagetop