落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 私の激昂などものともせず、彼らは満足げに姦計を巡らす。まるで、もう私など眼中にないかのようだ。
「では自称白魔術師のお前、これでさよならだ。力の程を披露する間もなかったな。せいぜいあの世で惜しみなく披露するといい」
「ちょっと待って下さい、神官長! まだ話は終わってな……」
 言いかける私の肩を、後ろから誰かが掴む。振り向くとそこにはアレン大隊長が縄を持って立っていた。
「手足をきつく縛り、猿轡を噛ませ、迷いの森の奥に放り込め。幻獣たちに見つかりやすいようにしておくように」
「はっ」
 アレンはグラウニクの指示に従い、持参した縄で手早く私の四肢を縛ると、ヒョイと肩に担ぐ。やられっぱなしでは悔しいので、必死の抵抗を試みるけれど、食い込むような縄のせいで自由に動けない。仕方なく、私は視線だけをグラウニクに向けた。
 彼は愉悦の笑みを浮かべている。その顔を見て、私の背筋は凍った。まるで、人を貶め騙し、殺めることが最高の快楽とでもいうように見えたからだ。
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