落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 そうしてじりじり移動していると、どこからか足音が近付いてきた。
 軽い足音は遠くで一度止まり、しばらくしてゆっくり近付いてくる。警戒の仕方が、なんだか小動物みたいだなと思った。
「あれ? パトリシアお姉ちゃん?」
「ん?んん?」
 この声には、聞き覚えがある! 昼間出会った獣人の少女ホミだ! 暗すぎて人間の目には闇しか見えないけど、恐らく獣人は夜目が利く。だから松明や明かりがなくても、私が見えたのだろう。でもこれで助かった。ホミに猿轡と縄をほどいてもらえば、あとは自力でなんとか出来る。
「んーー!んんーー!」
 私は必死で訴えた。伝わるかどうかはわからない。でも、この現状を見れば、誰だって助けを求めているとわかるはず……。
「……どうしたの? あっ! そうか、縛られて動けないのね! 待っていて、あたしが解いてあげる」
 ありがとう、天使よ! 心の中で叫びつつ、ホミが縄をほどいてくれるのを待つ。しかし! ホミのか弱い指先では、きつく縛られた縄はびくともしない。彼女も頑張っているけれど、これでは朝が来てもこのままだ。
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