落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「全然解けないよ……どうしよう……そうだ! お兄ちゃんを呼んで来よう!」
「ん?」
 お兄ちゃん? 待って、知らない人を呼ばないで。その「お兄ちゃん」が人間嫌いだったなら、きっとドーランの王様に言いつけられる。そして、私の人生は速攻で終了してしまう。
「待っていてね! お兄ちゃんならこんな縄、すぐに解いてくれるから!」
 ホミは鼻息も荒く駆けていった。
 どうするべきか。と、考えても、芋虫の速度でしか動けない私にはどうすることも出来ない。出来るのは、ホミの「お兄ちゃん」が友好的であることを願うだけだ。
 その後数分が経ち、地面を駆ける二人分の足音が聞こえた。ひとつはホミのもの。もうひとつはたぶん「お兄ちゃん」のものだ。
「ホミ。この人間かい?」
「うん。縄を解いてお兄ちゃん! あたしの命の恩人なのっ!」
「そうか、よし、わかった!」
 暗闇の中、彼らの会話を聞いていた私は、ほっと胸を撫で下ろした。ホミの兄が優しい獣人でよかった。これで、命は助かりそうだわ。
 ホミの兄は、まず私の足を縛った縄を解き、続いて手の縄を解く。最後に猿轡を丁寧に解くと、私の体をきちんと起こし、松明を灯した。
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