落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「手に入れて賢者に? で、では、妻を蘇らせてくれないか! 頼む!」
 アレンは突然私に向き直った。その目は真剣そのもので、怖いくらいの悲痛に満ちている。蘇らせてあげたい……でも、それが「出来ない」とすでに私は感じ取ってしまっていた。体の中にある「森羅万象」が蘇りに対して、凄まじい拒否反応を起こしていたのだ。
「すみません、出来ません」
「どうしてだ?」
「アレンさん、あなたがいうところの伝説の宝は森羅万象という膨大な魔力の塊です。森羅万象は世界の意思であるので、世界の理に反することを嫌います。人が生き亡くなることは自然の摂理。亡くなって土に返った人を掘り起こすような冒涜は、たとえ私が願ったとしても、森羅万象は力を貸さないでしょう」
 最後まで言うのが辛かった。アレンが顔を覆い、絶望に肩を震わせるのを見ながら、残酷な真実を伝えなければならないから。
 でも、本当に、もう出来ることはないのかしら。蘇らせることは出来ないまでも、せめてアレンの心を救うために、なにか……。
 あ、そうだわ! 肉体じゃなくて魂だけなら? 魂をほんの一時だけ呼び戻す。それは可能かしら?
< 223 / 264 >

この作品をシェア

pagetop