落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
『なかなか面白いことを思い付くものだ』
「え?」
 頭の中で声が響き、思わず小さく声が出た。
『生物の魂は死後、自然と一になる。そこから魂だけを具現化させるのであれば問題はない』
 森羅万象はそう言うと、最後に「願え」と言い放つ。嬉しさのあまりに頬が緩んだ私を見て、みんなが不思議な顔をしたけれど、そんなことに構っている暇はない。蹲るアレンと同じ高さになり、悲しみに打ちひしがれる彼に奥さんの名前を聞く。
 それから、私は魔術を行使するために願った。
「私は願う! アレンの妻、ミーナの魂をここに!」
 すると、眼前で光の竜巻が生まれた。それは最初激しく回転していたけれど、やがて緩やかになり、収束する。あとに残ったのは、輝く光の中に佇むひとりの女性。背が低く丸顔で大きな目のとても可愛らしい人だった。
「ミー……ナ? あ……ああ! ミーナ! オレだ、わかるか?」
 アレンは立ち上がり女性の顔を覗き込む。女性は微笑みながら頷いて、ゆっくり口を動かし、なにかをアレンに伝えている風だ。内容はわからない。しかし、アレンは泣きながらミーナに返事をしていた。
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