落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「だろ? よし! じゃあ早速行くぞ! 全員俺の背中に掴まれ!」
 慌ててヴィーの背中を掴む私とダルシアとアレン。その直後ヴィーは竜に変化し、暗い空へと舞い上がる。地上では一瞬激しい風が巻き起こり、砂埃を上げて住民を包む。誰かが空を見上げて指を差すと、人々が上を向き、次々と驚愕の表情を浮かべた。ヴィーが悠々と翼を広げ王宮に向かって飛ぶと、下界の騒がしさは一瞬で聞こえなくなった。
「国王と神官長のいる謁見室は北です! あ、そう! そこの灯りがついているところです」
 アレンが身を乗り出しながら説明し、ヴィーはそれを目指して滑空する。やがてヴィーは広い中央の庭に舞い降り私たちを降ろすと、自身も人型に戻った。
 そこから全員で謁見室を目指す。道中には人っ子ひとりおらず、真っ暗でとても寂しい気がした。
「あんなにいた兵士たちが全然いないぞ。ゴロツキのような奴らもいないなんて。これはもういよいよ末期だな」
「まともな兵士は残っていませんよ。傭兵どもも金払いが悪くなったので去ったのでしょうね」
 ダルシアとアレンが会話を交わす。私が訪れた時は、まだ活気があり賑やかだった。それが、わずかの間に廃城のようになっているなんて。悪意を持って悪事を行えば、やがて誰からも見限られてしまう。そう思わせる光景だ。

 謁見室の扉は、固く閉ざされていた。それをヴィーが蹴り、ダルシアが体当たりを食らわせると、強固な扉はおもちゃのように倒れ、部屋の中を露わにした。
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