落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 不意に優しい声が耳元で聞こえた。熱く大きな手が私の手に重なり、怒りで冷え切った体温や、凝り固まった感情を内から溶かす。横を見ると、ヴィーが優しく微笑んでいた。不思議なことにこの瞬間、私の中に芽生えつつあった負の感情は、全て消え去っていた。
「ありがとうございます、ヴィー。もう大丈夫です」
「そのようだ。では、任せるぞ」
「はい!」
 一度深呼吸し、胸に手を当てる。王宮に向かう時から、森羅万象の力をどう使うかは決めていた。力づくではなく、平和的な解決方法……それは……。
「私は願う! グラウニクと国王の持つ邪悪な心を消し去って! そしてバーディアと世界に真の平和を!」
「はあ? お前なにを言い出して……お……おお、これは、なんだ? 体から煙が!」
 魔術を行使した途端、グラウニクが悶えだす。呆けていた国王の体からも同じように黒い煙がシューと漏れ出したが、しばらく経つと消えた。しかし、グラウニクの体から出る煙は違った。黒い煙は彼の体を覆い隠すくらい大量で、止まる気配すらない。
「体が、体がぁぁぁ!」
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