落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 ぬっと現れ、リンレンの頭を軽く小突いたのは黒く丸い耳の獣人。その耳の形状から、クマの獣人だと推測した。体はかなり大きくて、年齢は三十前後のようだ。
「ははーん。焦るってことはなにかまた悪さをしたのか……ん?」
 トネリは私に目を向けて、不思議そうな顔をした。
「見ない顔だが……ウェアキャットかな?」
「そ、そう! 僕たちの叔母さんのいとこの妹の、そのまたいとこのパトリシアだよ」
 ……それ、もう、赤の他人だよね?
 必死で言葉を並べ立てるリンレンは、心許なさそうにこちらを見た。彼も失言をしてしまったことを焦っているらしい。でも、トネリはなにも気にしてないようにあっけらかんと言った。
「へえ。そうなのかー。ようこそ、ドーランへ。あんた、人間の世界に隠れて暮らす、数少ない獣人のひとりなんだろ? そういう変わった獣人もいるからな。まあ、ここは人間の世界と違って、隠れなくていいから過ごしやすいぞ。ただ、今はバーディアと戦争中で、迷いの森へ行くのは禁じられているがね」
「えっ。そうなのですか?」
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