落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 思い出すわ……ダルシアとふたりで生きてきたあの頃を。両親が亡くなった時も、ライガンが亡くなった時も、ダルシアがいた。今のホミとリンレンのように、仲良くふたりで頑張ってきたのだった。
 突然思い出した兄の姿に、一瞬不安が過る。バーディア国王とグラウニクが言っていたことを思い出したからだ。ダルシアは聡明だから、あのふたりに騙されたりはしないと思うけど……。どうにも、不安が心に沁みついて離れない。なんとか、連絡が取れればいいのに。
「パトリシアお姉ちゃん? どうしたの?」
 気付くと、ホミが不思議そうな顔で私を見上げていた。
「あ、ううん。なんでもないわ。ごめんね」
「パトリシアもお腹が空いたんじゃないですか? まずは食べて幸せで心を満たしましょう! 空腹時は悲観的になったり、イライラしたりしますからね」
「うん……リンレンの言う通りだわ。夕食を食べて、幸せな気持ちを補充しましょう!」
 私は力強くふたりに頷き返した。
 心配しても仕方ない。今は、自分に出来ることをしながら、この理由もわからない馬鹿げた戦争を、終結させる糸口を掴むことが先決だわ。
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