落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 そう心に誓うと、ホミに手を引かれ食卓テーブルに移動する。席に着くと真ん前に置かれたかぼちゃシチューのいい匂いが鼻腔を擽った。
 これが、幸せの香りね。
 ぐう……と小さく鳴ったお腹の音をごまかしながら、私は大きな声で「いただきます!」と手を合わせた。
 
 夕食を済ませると、みんなで救護所へと向かう。
 完成したアミュレットは、麻で編んだ大きめの袋に入れて私が持ち、リンレンは薬草茶の茶葉を自身の鞄に入れ、肩から斜め掛けする。持つものがないホミは、元気よく手をぶんぶんと振りながら、颯爽と私とリンレンの前を歩き、鼻歌を歌っていた。
「ホミ、張り切り過ぎて転げないようにしなよ!」
「はーい」
 リンレンの注意に答えたホミは、軽やかな足取りで石畳を下る。デコボコな道も、右に左にぴょんぴょんとステップを踏み、まるで飛んでいるかのようなのだ。さすがウェアラビット。まさに、ウサギのような身のこなしである。
 すれ違う町の獣人たちが、ホミやリンレン、そして私を見て、目尻を下げる。優し気な眼差しは、この国でウェアラビットの兄妹が、愛されている証拠なのだと思った。
「王様、今日はもう来ているかな?」
< 68 / 264 >

この作品をシェア

pagetop